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ドイツの生活②

~生活のリズムを掴む~

 

Julia Suslin氏との出会い 

幼稚園の申込み、リトミック通い、と少しずつではありますが、生活が軌道に乗ってきました。

は3歳半。この年齢で楽器を始める子供は日本では少なくありません。主人は私以上の音楽マニア、家では一日中音楽が流れています。は生まれた時から、いいえ、生まれる前からどっぷりとクラシック音楽の中で育ってきました。なので歌ったり踊ったりするのが大好き。・・・なのに、その音程、リズム感の・・・・・・・悪いこと!!!あんなに聴いているのになぜなんだー!?という焦りもあり、ピアノの先生探しにも力が入ります。

ドイツに駐在中の日本人家庭の子供達の多くは日本からの音楽留学生から教えてもらっています。でも、出来ることなら本場ドイツの先生に習わせたい!

 

やっと掴んだ情報がSuslin(ズスリン)先生でした。

Suslin先生は70代半ばのロシア人のおばあちゃん先生です。作曲家であるご主人のVictor Suslin氏と共に40年程前にロシアからドイツへ亡命してきました。ドイツ人のピアノの先生が沢山いる中、「どうしてもズスリン先生に習いたい!」とわざわざ足を運ぶドイツ人の子供たちも多いとの事。いったいどんな先生なのでしょう。どんなレッスンなのか気になります。ようやくアポが取れ、を連れて出かけて行きました。ところが!バスの下車駅を間違えた私達は道に迷って約束の時間を1時間近く遅れてしまったのです。3歳半のを引きずるようにして歩きながら到着した時にはレッスン室のドアには鍵がかかり、先生の姿はありませんでした。

教室はギムナジウム(5年生から通う9年制の高等学校)にあります。Suslin先生はピンネベルク音楽学校に所属され、レッスンはこのギムナジウムの放課後の音楽室を利用しています。鍵のかかったドアの前で途方に呉れている私の横で、歩き疲れたは廊下で眠ってしまいました。15分ほど学校の冷たい廊下に座り込んで寝ていましたが風邪をひいてしまいそうです。先生の携帯番号も聞いていなかったので、どうすることもできません。Suslin先生とは縁がなかったのだ・・とあきらめてを揺り起こして帰ることにしました。トボトボと駐車場を横切って歩いていると、向こうの方で両手を振り上げて叫んでいる一人のおばあちゃんが・・。こういう時アジア人は得ですね。目立っちゃうのです。帰ろうとしていたSuslin先生が日本人母子の姿を見つけてくださったのでした。

大幅に遅れたこともさほど気にかけず、とにかくもう一度教室に戻って話しましょう!と言って下さいました。

教室に入って自己紹介をさせて頂いたあと、ズスリン先生のレッスンについて、いろいろお話を伺いました。先生はモスクワ時代に学んだピアノ指導法に確固たる自信をお持ちでした。その後ご主人と共にドイツへ亡命されて40年、ピアノ教師一筋で今までこられたようです。ご自身で出版されたピアノ教材を見せて頂いて絶句・・・。今まで私が日本で目にし、使用してきた教材とは全く違うのです。

 

先生の指導法について、いろいろ伺っている間、一眠りして充電できたは一時たりもじっとせず、教室中を動き回っていました。そんなを見て、ズスリン先生はこうおっしゃいました。「まだ無理なんじゃない?ドイツ語もわからないみたいだし・・。」

  ・・・そうですよね(-_-;)

 

ズスリン先生の実際のレッスンを聴講したわけではないので、善し悪しの判断はできません。でもこの教材によるレッスンがどのように進められるのか、気になるところです。また、やはりロシア人なのでロシアの作曲家(スクリャービン・チャイコフスキーetc.)を得意とされているようで、それは私にとっては今までにあまり弾く機会がなかった分野です。というわけで、まずは私が先生のレッスンを受けさせてもらい、そのレッスンにを必ず同伴させる、そしてがピアノに興味を持ち始めた時点でのレッスンを開始する、ということで話が決まりました。

 

 

幼稚園が決定!

3つの幼稚園に申込みをして数ヶ月・・。ついにその中の1つから入園許可の連絡が入りました!家から歩いて123分のところにある「ルーカス・キンダーガルテン」という比較的こじんまりとしたアットホームな感じの幼稚園です。

 

幼稚園には入園式などなく、個人の都合にあわせてバラバラに入園します。8月から入園出来ることになりました。その前に2回ほど、親同伴で体験入園します。は9月で4才になるので、日本でいえば「年中さん」でしょうか。でもここでは年齢は関係ありません。クラスは縦割りで2歳位から6歳位までの子供達が混ざっています。

 

体験入園に行くと、早速お姉ちゃん株の子供が世話を焼きに来てくれ、はド

キドキしながらも嬉しそう!まずまず順調な滑り出し・・と思われました。

 

Julia Suslin先生のレッスン

8月といえば日本では猛暑。じっとしていても、じわっと体にまとわりつく汗、ギラギラする日差し。でも北ドイツの8月はもう、夏の終わりです。木陰に入ると風は冷たく、汗などほとんどかきません。渡独して10ヵ月、すっかり生活も落ち着きました。私は週2回のドイツ語講座(託児付き)、週1回のピアノレッスン、はリトミック、そしてもうすぐ待望の幼稚園が始まります。

 

Suslin先生のもとに通ってくる生徒たちはほとんど子供ばかり。大きくても二十歳前後です。なので私のようなオバサンは異例で、先生もやりにくかったに違いありません。レッスンが始まってすぐにわかった事なのですが、先生はかなりのオシャベリ好き。喋り出したら止まりません。最初は一生懸命聞いていても、だんだん集中力がなくなり、「いつレッスン始まるのかなぁ・・・」と思いつつ、相槌ちを打ちます。6070%ほどの理解力で返事を返すのは、結構ムツカシイのです。それでも私にとって収穫となる内容もしばしば。例えば先生の使用される教材のひとつに「ブラームス51の練習曲」があります。これを一冊すべてするわけではなく、この中から数曲抜粋し、かなり小さな子供から練習させています。最初はゆっくり、腕の重み、手首の動きを考えながら練習します。チェルニーとは一味違ったエチュードです。「このエチュード、使ったことありません。」という私の一言に先生の講釈は延々と・・・・・。

 

幼稚園に入園!

8月に入り、いよいよ本格的に幼稚園がスタートしました。その日、ルーカス・キンダーガルテンに入園したのはただ一人。

 

入園式もなく、両親揃っての記念写真なども撮りません。付き添いは私一人、普段着で教室に連れて行くと、「おはよう」と優しい笑顔で先生が迎えてくれたので一安心。「お母さんは帰っていいですよ」と言われの顔を見ると「大丈夫。バイバイ」と言ってくれたので、そのまま帰宅。昼過ぎに迎えに行くと「楽しかった~!」と笑ったので「おお!頼もしい。」と胸をなでおろした。

 

でも、これは単なる強がりだったようです。その数日後。「いや~~!!!行かない!行きたくない!!」と絶叫が始まったのです。先生の言うことがわからない。お友達の言うことがわからない。自分が何をすればいいのか、わからない。やっぱり日本人幼稚園にしておけばよかったのだろうか・・。

 

幸いにも一週間後にまた、新しく入園してきた1才下の女の子と気が合い、やっとお友達ができました。またに笑顔が戻りました。

 

レッスン開始

ドイツ生活も10ヶ月が過ぎました。9月だというのに、上着なしでは出歩けません。日も短くなり冬はすぐそこまでやって来ています。

 

幼稚園生活にも慣れてきたし、そろそろピアノを。(と、思っていたのは私だけ。当のは全く思ってはおりません。)ここで、世のお母さま方へのアドバイス。もし、我が子に楽器をさせたい、とお考えなら、絶対に慌ててはいけません。

 

もし、ご自分が演奏なさるなら、楽しく演奏しているところだけを見せ、もし演奏されなくても、上手に演奏している子供達の映像などを見せ、「私もやってみたーい」と子供が言っても「だめだめ。まだあなたには早いわよ。」ともったいつける事です。「やってみたい。弾いてみたい。」という気持ちをギリギリまで引き伸ばしてから「じゃあ、やってみる?」っていうのと、我が家のように「早く始めましょうよ。もうピアノはあるのよ」というのでは、子供のモチベーションが違います。

 

今さら後悔しても始まりません。9月で4才になったに私は「ピアノやってみたーい!」となかば強制的に言わせたのでした。せめて譜読みだけでもできるようにしておけば、ズスリン先生のレッスンが始まった時に楽だろう、という親心(?)です。も大好きなママの笑顔を見たい!と頑張ります。でもやっぱり、母子でのレッスンは無理ですねぇ・・。お互い5分も経たないでブチギレてしまいます。

 

Suslin先生の教材

DIE RUSSISCHE KLAVIERSCHULE”(訳すと、「ロシア式ピアノ学校」となるのでしょうか)これが、ズスリン先生ご自身が編集され、自信をもって使用されている教材です。

実際、ズスリン先生だけでなく、多くの先生がレッスンに用いられているようです。

 

はじめて手にとった時は、導入期の幼児にとっては音符は小さいし、挿絵も全くないし、正直言って、あまりいい印象は持ちませんでした。少なくとも、さあ、これからピアノを始めよう!と期待に胸膨らませている、小さな子供達をワクワクさせるような要素は見当たりません。導入期に使用する一般的な教材はカワイイ動物やキャラクターが直径1cmほどもある音符の回りを飛び回っています。やっと両手奏が始まるか・・といったところで1冊め終了(約¥1,000)。子供にとっては1冊終わった!という達成感があります。でもちょっと、不経済?

 

Suslin先生の教材は1冊がなかなか終わらない。上(赤)、中(青)、下(緑)の3冊がありますが、1冊にエチュードから演奏会用の曲まで収まっています。子供にとっては気が遠くなるような曲数です。そのかわり、赤から青へ、青から緑へ移行するときの喜びは大きいでしょう。

 

赤の本(導入)では、簡単な旋律をノンレガートで練習します。指を動かす練習よりも、いい音を聞き分ける練習、そしていい音が出たとき、その打鍵時の指の感触を確認していきます。ロシアやウクライナの民謡、またバルトークなどが多く、私にとっては馴染みがあまりありませんが、子供にとっては楽しく感じるようです。

 

また、初期の段階で臨時記号が多く使われ、読譜力をつけていかないと後半で苦労します。赤の本が終わる頃には、そろそろソナチネなんかを弾いてみましょうか・・というレベルに達しています。楽しい曲が沢山入っているのですが、ブルグミュラーが取り上げられていないのが残念です。25曲全て弾く必要はありませんが、表題からイメージして曲に取り組むにはブルグミュラーは必須だと考えています。ズスリン先生とはこの点では意見が合いませんでした。

 

 

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